震災を振り返って ― ②
有限会社ケンユウ 佐藤陽一
日本薬剤師会 認定薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
避難所である石巻市立門脇中学校の体育館の更衣室が臨時診療所でした。
この臨時診療所に受診する患者さんの病気は、ホコリの多い環境での寝起きによると思
われる上気道炎が最も多く、続いて、おにぎり、弁当、サンドイッチ、パン、インスタント食
品など、塩分の多い食料しか食べられないことが影響していると思われる高血圧でした。避難所の床に直に寝るので、他人が夜間歩くことで発生する振動などによる不眠といったものもあり、これらは実際に起こってからでないとなかなか考えられないことでした。
受診時には、お薬手帳を持参する患者さんがほぼ100%で、医師は手帳を見ながら診療を進めていきました。お薬手帳は、震災前から使用している方、震災後にもらった物を使用している方がおり、「命をつなぐための重要な手帳」と話される患者さんもいました。この薬はどんな時にもらったかなど、自分で色々書き込んでいるものも見られました。
この時私はお薬手帳の重要性を再認識しました。医者任せ、他人任せの医療ではなく、体調管理を自分でするのだという心意気も感じられました。
東日本大震災後、私が医療ボランティアとして入った宮城県石巻市は、津波により沿岸部はほぼ壊滅的なダメージを負った地域です。災害医療本部が置かれていた石巻日本赤十字病院でのミーティング時に、移動時には自分のいる位置をよく確認し、地震が発生した場合5分以内に高台に避難するよう、また暗くなる前に戻るように指示を受けました。
避難所がある高台には家があり、庭があり、そこだけを見ると何事もなかったかのように思えました。しかし、後ろを振り返ると言葉を失う光景が一面に広がっていました。(次号につづく)