医療コラム

咳のお話②〜咳が長引く原因とは?〜

咳のお話②
〜咳が長引く原因とは?〜

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
 本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

風邪を引いた時、熱、痰、鼻水、のどの痛みなどの症状がおさまっても、咳だけがしばらく続くことがあります。風邪自体は、通常、数日から1週間くらいで治るのですが、咳はいったん出ると長引くことがあり、感染後咳嗽と呼んでいます。これであれば徐々に改善し、いずれはおさまりますが、なかなか改善しない場合は、肺癌や肺結核など、肺に陰影の出る大きな疾患がないか、念のため胸部X線検査を行います。異常がない場合は、以下の手順で診療を行います。


 

咳が長引く場合、気管支喘息であることが最も多く、これは気管支拡張薬が良く効くため、気管支拡張薬を使用してみて、明らかに咳が減少するようなら気管支喘息と診断できます。アトピー咳嗽という、気管支拡張薬の効かないアレルギー性の咳もあります。気管支喘息、アトピー咳嗽は、夜間から明け方にかけて悪化しやすく、冷気や乾燥した空気を吸い込んだ時、話しをしている時に咳が出やすい傾向にあり、風邪を引く度に悪化して咳が出る人もいます。

 

気管支炎や肺炎を起こすと、通常、咳だけでなく、発熱、黄色い痰を伴いますが、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳などが原因の場合、熱や痰に乏しく、咳だけが持続することがあります。鼻水を伴う場合は、副鼻腔に炎症を起こして膿がたまっているか、鼻のアレルギーが考えられ、胸やけがある場合は、逆流性食道炎(胃酸が胃から食道に逆流して食道に炎症を起こす病気)による咳の可能性が高くなります。また、薬の副作用で咳が出ることもあります。

 

咳が長引く原因はたくさんあり、血液検査や胸部X線、痰検査など精密検査を行っても診断に結びつかないことが多く、症状や経過などを詳細に検討し、病状に合った治療を行う必要があります。1回の診察・治療で良くならないことも多いため、呼吸器内科の専門医に根気強く通院して治療してもらうと良いでしょう。