老化による皮膚のカサカサとは…①
前 新潟大学医学部皮膚科学教室 講師
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
渡辺 力夫
腕や下枝・体がカサカサしてかゆくなり、医療機関を受診したことはないでしょうか?その際に「皮膚の老化ですねー。仕方ないね。」などと言われ、塗り薬を処方されて終わった経験はないでしょうか?これは医学的に、乾皮症(かんぴしょう)、あるいは皮脂(ひし)欠乏性湿疹(皮膚炎)と診断されている病態と思われます。
乾皮症は、皮膚の表面(角層)の水分が減少することによって生じる皮膚の乾燥状態です。皮脂欠乏性湿疹は、乾皮症にかゆみが加わり、引っ掻いたりする刺激によって炎症を生じ、湿疹となってしまった状態です。角層の水分保持には、角層の細胞間にある脂質(代表がセラミド)や天然保湿因子(低分子アミノ酸)などが重要な役割を果たしています。非常に残念ながら、これらは加齢に伴って減少していきます。つまり、皮膚の乾燥は加齢とともに進行するのです。
また、夏などの季節では、皮膚の機能低下の影響は隠されています。しかし、冬などの寒い季節になると、汗をあまりかかなくなり、居住空間を中心に乾燥した環境が続くようになります。これらは、そのまま皮膚の乾燥化をきたします。乾皮症・皮脂欠乏性湿疹が、高齢者や冬季に多く認められるのはそのためです。
ただし最近では、清潔嗜好による過度の洗浄や、家屋の過度の乾燥などにより、若年者や冬季以外にもみられるようになってきました。乾皮症・皮脂欠乏性湿疹は、おもに中高齢者の皮膚にみられます。全身に生じ得ますが、下枝や腕の外側に認められることが多いです。皮膚が乾燥してカサカサします。脱衣時に、粉やフケに似たようなものが飛散することもあります。細かいひび割れを認め、かゆみのために引っ掻いた傷や、点状に「かさぶた」が付着していることもあります。
冬季に発症し、春頃になると自然に軽快することが多いです。採血などの検査は特に必要としませんが、時に血液疾患や腎障害・糖尿病患者などに高度の乾皮症を認めることもありますので、注意が必要です。
次回は、これらの治療法や日常生活の注意点について述べたいと思います。(以下、次号に続く)